宝石・図書館


宝石・貴金属って数多くの人から愛されているのに、その姿についてはあまり知られていなかったり、誤解されていたりします。あまりその姿を知らないことが神秘的な色合いを深めて強い魅力になっているのかも知れませんが、誤解されているのは彼らが可哀相です。
そういった誤解を解きたい、豆知識をいろいろ増やしていただきたいということで宝石・貴金属について徒然なるままに筆をすすめていきたいと思います。

ダイヤモンド

ダイヤモンドの堅さ
「タイヤモンドは割れやすいんだよ」と言うと多くの人が驚きます。ダイヤモンドは宝石の中で完璧な強さを誇っていると思っている人が多いので、あえてびっくりするような言い方します。正確には「ダイヤモンドには割れ易い方向がある」という言い方になります。
ダイヤモンドは確かに堅いです。硬度は「10」と最も堅いのでダイヤモンドに傷をつけるためにはダイヤモンド以外の物質では不可能。その意味では完璧といっていいと思います。
しかし、「硬さ」と「割れ易さ」は別のもの。ネコのぬいぐるみとガラスで出来たネコの置物の関係といっしょです。ガラスでできたネコの置物の方が硬いけど、高いところから落とした場合ガラスの方がこわれやすいのと一緒です。ダイヤモンドの原石は多くの場合ピラミッドをつけたような正八面体の形をしています。その面に平行な方向が4つありますが、その方向がダイヤモンドの弱点の方向。その方向に強い力がかかると割れてしまいます。
クラリティーがIクラスの石に時々その面に平行な方向に傷(割れ目)が入っているのがりますが、そういう石はお手入れの時に気をつけなければいけません。何かの拍子に力がかかると、パーンといってしまうことがありますので注意をしなくてはいけません。
ちなみに、もっとも割れにくい宝石は何かというと、「翡翠(ひすい)」なのです。

ダイヤモンドのカット基準
ダイヤモンドのグレーディングレポート(鑑定書)には、石の蛍光等を含む4Cの情報が記載されています。 4Cのうち重さ(キャラット)および大きさ以外はグレーダーの目視で行われます。目視と言っても基準は明確なので熟練しているグレーダーであれば差がでることはそれほど多くなく異なっても1段階です。1段階でも例えばVVS1とVVS2、DカラーとEカラーでは価格が大きく異なってくるので必ず2人以上の熟練したグレーダーで同じ石を鑑定することになっています。これはAGL(宝石団体鑑別協議会)に所属している機関(大手である中央宝石研究所、全国宝石学協会、AGTジェムラボラトリー等も会員です)発行の鑑定書であれば当てはまるのですが、それ以外の機関が発行したものは様々です。きちっとしたグレーディングをしている機関もあれば、むちゃくちゃな機関もあります。クラリティーにしてもカラーにしてもきちっとした基準はあるのに残念なことです。

さて、最近ダイヤモンドのカットにこだわりを持つ店が増えているようですがカットの評価は何段階あるのでしょうか? よく聞くのは「エクセレント」「ベリーグッド」「グッド」くらいでしょう。この下にひとつか二つか?ひとつのところもあれば二つのところもある、というのが正解です。
現在のダイヤモンドのグレーディング方式はGIAというアメリカの教育機関が作り出したものを採用しています。カット基準についてはGIAでは総合評価(エクセレントとかベリーグッドとか)を出すことをしておらず、宝石学の知識がない人間にもわかりやすいよう総合評価を設けて欲しいという要望が小売店や消費者から出されていました。そこでAGLとしてカット基準を設けることになりました。

よって、現在のAGL会員の鑑定機関はカット基準にAGL方式を取っています。しかし、AGTジェムラボラトリー(日本で唯一GIAの鑑定書を出せる機関、以下AGTと略)だけはGIAグレードで行うということで独自の基準でグレードを出しています。GIAでは従来よりカットに4つのクラスを設けており、その基準を準用しAGTの鑑定書はクラス1をエクセレント、クラス2をベリーグッド、クラス3をグッド、クラス4をフェアとして出しています。ちなみに、AGL基準ではフェアの下にプア(POOR)があります。

このようにAGTと他のAGL会員の鑑定機関の鑑定書カット基準は若干異なり、結果としてAGTでエクセレント評価のものがAGL会員の機関ではベリーグッドだったり、逆にAGL会員の鑑定機関でエクセレントだったものがAGTではベリーグッドになるということは十分有り得ます。

エクセレントになる条件はいくつもありますが、主な違いをあげると
AGL基準 AGT
テーブルの広さ53−58%53−60%
(直径に対して)
クラウン角度 33−35度 34−35度

パビリオン深さ42−44% 43%
(直径に対して)
他がエクセレントの条件をすべて満たしているとして、テーブルが60%のダイヤモンドを鑑定した場合、AGL基準ではベリーグッドになりAGTではエクセレント評価になる一方、クラウン角度が33度のダイヤモンドを鑑定するとAGL基準ではエクセレントを取れますが、AGTではベリーグッドになってしまいます。
では、どちらの基準の方がいいのでしょうか?
おんなじというのが私の意見です。ダイヤモンドの美しさはベリーグッドの上(エクセレントの条件をひとつ、2つ落としたレベル)以上あれば、あとは石そのものの透明性(透明度=クラリティーとは異なる)次第だと思っていますので。透明性については次回ご説明したいと思います。

ダイヤモンドの透明性(トランスペアレンス)
時々、何故か輝きの悪いダイヤモンドに出会うことがあります。カットが悪いのかと思ってルーペで覗くと、プロポーションばっちり、対称性も研磨も問題がなかったりします。 こういうことはよくあることで、いわゆる4Cでのダイヤモンドの評価ではその美しさや輝きを全てはいいつくせないということになります。鑑定書にものっていないのに、その美しさや輝きを左右する犯人は何なのでしょう?

答えは、クラリティーグレードでは対象にならない(10倍の拡大で発見できない)微少な内包物や結晶の歪みです。これらが光の散乱や吸収を生み輝きを悪く見せるのです。 10倍の拡大で発見できるのは「クラリティー」の中で評価されますが、10倍の拡大では発見できないものについては現在の評価する基準がありません。10倍では見えなかったものが50倍、100倍にした時に広範囲に微少な内包物があるのが発見されても、それはクラリティーにはまったく影響を与えるものではありません。しかし、それがダイヤモンドの輝きに影響を与えるであろうことは想像できることと思います。

快晴の日、そらには雲ひとつありません。その状態で夜になり星が出始めます。都市と田舎、あるいは都市と砂漠での星の見え方を考えてみてください。東京の都心では(回りが明るいという理由もありますが)数十−数百程度でしょう。それに対して砂漠などでは降るように星が見えますよね。同じ快晴の条件でで肉眼で見た目では何も変わらないけれども、目に見えない水蒸気や排気ガスなどが暗い星の光を吸収してしまうからです。こういった水蒸気や排気ガスにあたるものがダイヤモンドの中にどれだけあるかが、その石の輝きに影響を与えるということなのです。

こういった10倍の拡大では見えない微少な内包物や結晶の歪みによる光への障害を考慮する要素が透明性=トランスペアレンスなのです。これはJJA(日本ジュエリー協会)のダイヤモンド小委員会でも実際に取り上げられて検討されているとのことですが、定量的に評価できないとのことで、とても重要なことではあるのですが世の中にどう広めていくのかまだ見えてきません。ただし、ダイヤモンドを売る側からすると知っていなければならない話しであって、ダイヤモンドの輝きはカットで決まるという嘘が未だにあちこちで聞かれるのは悲しいことです。ダイヤモンドの輝きがカットで決まるということは、鑑定書のカット表記が同じであれば同じ輝きであるということを意味しています。それならば鑑定書だけ見て売買すればいいということになりますが、プロで実際石を見ないで買う人はほとんどいないでしょう。それは鑑定書だけでは石の美しさも輝きも分からないということをみんな経験的に知っているからです。

カラードストーン

天然石と合成石(1)
「この石ホンモノ?」とよく聞かれることがあります。 まあ、大体は天然石なので「ホンモノ」だと答えてあげると安心するようですが、まれに合成石だったりすることがあります。そんな時は「ホンモノだけど合成石です」と答えるようにしています。多くの方は、キョトンとてしてしまうようですが...
「天然石」と「合成石」、これは天然ウナギと養殖ウナギの関係に似ています。ウナギに違いはないけれど、自然の中で取れたか人間の手がかかっているかの違いによって分別されますよね。天然石と合成石も同じです。
仮にルビーを考えてみましょう。天然ルビーと合成ルビー。天然ルビーは自然から採取されたもので、合成ルビーは人間の手によって工場や研究所で作り出されたもの、しかしながらルビーに違いはありません。共に色は赤、化学組成は酸化アルミニウム、結晶構造は六方晶系、屈折率は1.762−1.770、硬度は9等々、ほとんど変わるところはありません。
ということで、合成ルビーを持っている人に「この石はホンモノ」と聞かれた場合、ルビーということに対する真偽では「ホンモノ」ということになる訳で、但し書き的に「合成石だけど」と付け加えるようにしているのです。
合成石は比較的高価な宝石に存在します。ルビーのほかダイヤモンド、サファイア、エメラルド、アレキサンドライト、スピネルなどがあります。もし、お手元の石が天然がどうか不安な時には鑑定・鑑別機関に見てもらい鑑別書(鑑定書ではない)を発行してもらえばいいでしょう。ダイヤモンドの鑑定とことなり台座から石をはずす必要はありません。お近くの宝石屋さんに頼めばやってくれると思います。製品ひとつにつき、3-5千円程度かと思います。

天然石と合成石(2)
天然石と合成石の区別は簡単につくのでしょうか? 簡単につくものと難しいものに別れます。どうやって合成石を作るかによって簡単に分かるものと難しいものとができるのです。その違いを簡単に説明すると、
1.成分の同じ粉末(ルビーやサファイアなら酸化アルミニウム)を高温で溶かし、ポタッ、ポタッと落下させ鍾乳洞の鍾乳石のような筒状の形で作る
2.種結晶を同成分の液体にいれ、自然に近い形でゆっくり(数ヶ月かけ)結晶化させる 大雑把にいうというとこの2種類になります。
1の場合は、内包物がほとんどない。あまりに奇麗すぎるという特徴があり、すぐに合成石であることを予想させます。その場合、この種の合成石の特徴である内包物としての気泡やカーブ状のバンドを見つければすぐに合成石だと断言できます。
問題は2の場合です。これがパッと見ではわからないのです。絵や書で例えれば精巧な贋作を調べるようなものでなかなか大変です。時間をかけて結晶化させているので天然石に近い内包物があるので、つい天然石と思ってしまいます。この場合は内包物の性質が決め手になります。この手の合成石に特徴的な内包物があればすぐ判明することもありますが、ルーペは最低必要になりますし、ルーペでは分からず顕微鏡を使用しなければならない場合もあります。通常はリング等の台座がついているのでルーペだけではなかなか難しいですね。 簡単ではありませんが、天然石としての特徴、あるいは合成石の特徴が明確に現れていればその場で断言できますが、どっちとも取れる場合もあり、その場合は信頼のおける鑑別機関に頼むようにしています。 同じ合成石でも1はとっても安く、2の方法で作ったものは結構高価です。
鑑別機関では顕微鏡だけでなくスペクトルを使った成分分析装置などを使用して鑑別してくれるところもありますが、それでもまれに「鑑別不能」という回答がでることがあるそうです。最近の合成技術はすごいものがあるみたいです。

この石なんの石?
このような仕事をしていると、こういう質問を良くされます。
不透明で鉱物の特徴をはっきり表しているものならともかく、透明でリングに留まっているものを一目見ていいきることはなかなか度胸のいることだと思います。 要は外見が似ている宝石って沢山あるということなのです。沢山あることを知っているが故に言い切れないということになります。
例えば、赤い石を考えてみましょう。アルマンダインガーネット、パイロープガーネット、ロードライトガーネット、ルビー、スピネル、ルベライト、レッドベリル、ロードクロサイト、ガラス等々.. ガーネットとルビーの赤は種類が違うじゃない、という方もいらっしゃると思います。確かにガーネットの赤とルビーの赤は違うのでルビーをガーネットと間違うことはありません。では、ガーネットの中でアルマンダインガーネットとパイロープガーネットを見ただけで言い切ることができるか、ルビーとスピネルを見ただけでいいきることができるか。どちらの確率の方が高いといういいかたはできます。しかし、はっきり言い切ることはなかなか恐いものです。それを経験的に知っているのです。ですので、断定できないということになります。
それでは、どうしたらこの石が何の石なのかはっきり分かるのでしょう。何を使えば分かるのでしょう。

1.肉眼・・・・外観で候補を2−5種類くらいに絞り込みます。経験的なものが大きいです。
2.屈折計・・・鉱物には固有の屈折率を持っています。有名な数値としてはダイヤモンドが2.417とか..これが分かれば、9割位断定できます。
3.はかり・・・鉱物には同様に固有の比重があります。水1とした時の重さです。ダイヤモンドは3.52になります。屈折率が近い宝石(例えばトルマリンとトパーズのように)もあるので比重が分かれば(トルマリンは3.06、トパーズは3.53)断定できます。ここまで分かればほぼ100%判断できます。
4.光学的特徴・・実際問題としてリング等に石が付いている場合がほとんどですので、比重ははかれません。そういった時に、特殊な見方をしたときの像の出方等で判断します。

何かわからない石が何かを決めるためには、ルーペだけではなくちょっとした機械がどうしても必要になります。

貴金属について
宝飾で使われる貴金属といえば、プラチナ、金、銀の3つですが、金には大きくイエローゴールド(以下単にゴールドと表記)とホワイトゴールドがあったり、メッキするための金属ロジウムがあったりして、お客様の頭の中でごちゃついたり、誤解していたりする方も結構いらっしゃるようです。

ちょっと整理してみたいと思います。これら3つの金属は単体では柔かいのでジュエリーやアクセサリーに加工する時は、わずかな例外を除いて必ず硬化材としての金属との合金で用いられます。

プラチナですと、「900」の表示がある時は90%がプラチナで残りの10%が硬化材としての他の金属、金ですと「K18」の表示があるときは、24分の18=75%が金、で残りの25%が硬化材としての金属になります。銀も通常「925」の表示がありますが、同様に92.5%以上が銀で残りが硬化材の金属になります。それを表にすると下記のようになります。(微量に加えるものは記載しない)

通称

日本名

主たる貴金属

硬化材

プラチナ

白金

プラチナ

ルテニウム、パラジウム、イリジウム

ゴールド

銅、銀

ホワイトゴールド

ホワイトゴールド

ニッケル(銀は含まない)

シルバー

銅、ニッケル

ホワイトゴールドを直訳すると白金となりますが、白金とは日本ではプラチナのことを指しますから、ホワイトゴールドはあくまでもホワイトゴールドとしか言えません。

日本人で誤解されている方が時々いらっしゃいますが、外国では、特に東南アジアの宝石屋さんの店員さんが誤解しているケースが多いようです。思うにプラチナを使う習慣がないからつい、プラチナとホワイトゴールドを同じ物だと思ってしまうのでしょう。

もうひとつ、重要な貴金属があります。メッキ専用金属ロジウムです。プラチナ族の金属ですので化学的性質はプラチナと似ていますが、メッキに適した物理的性質があるようです。ロジウムは主に、プラチナ、ホワイトゴールド、シルバーに用いられます。白いという色相上の理由もあるのでしょう。

プラチナ、ホワイトゴールドにロジウムをメッキする理由としては、表面を硬くし傷がつきにくくする、より光沢を良くするということが上げられます
シルバーにメッキする理由としては、上記の理由のほかに、シルバーの酸化をしにくくし、変色しにくくするということもあります。

ちなみに、ゴールドにロジウムメッキもできますが、外見はプラチナそのものになってしまいます。